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俺が初めて本物のAtlanciaのベースに出会ったのは1980年、ちょうどNANIWA EXPRESSのデモテープを録る前日だった。けったいなメーカーが日本にもあるものだと気にはなっていたのだが、実物を見るのはその時が初めてだった。
楽器屋の店頭で適当に弾いてみたのだが、丸太ん棒のようなネックは思いのほか俺の指には馴染んだ。とにかく音の立ち上がりの早さ、そして音程感のクリアーさには驚いたものだ。舞い上がってしまった俺は、その店が顔見知りだったのをいい事に、有り金だけ店に残してこのGarlandを持ち帰ってしまったのだ。

次の日のレコーディングからいきなりこれが俺のメインベースになってしまった。そんなに機用に色々な音が出るモデルではなかったが、このベースなればこそのガランとした乾いたサウンドは俺を夢心地にした。
このベースはその後もメインとして使いつづけ、84年の夏まではNANIWAのレコーディングでも80%はこのGarlandを使ったのだった。

とにかく楽器としての完成度が高く、鳴りが安定しており、重低音はないものの非常に太い中低音を持っていた。パッシヴコントロールこそが持つよさを、積極的に出していたと言える。
コントロールでもうひとつ面白いのがトーンコントロールで、豚の鼻のように見えるピックアップ自体が回転する事によって音色の変化を付けると言う奇想天外なアイデアなのだ。すなわち弦に対して垂直にセットしている時はシングルコイル的に、また平行にセットするとハムバッキング的な音色になるわけだ。
実際はこの中間にもつクリップポイントがあって、気分によって各弦ごとにこれを調節できる優れものなのだ。今でもこのベースを持つと当時の感覚がフラッシュバックする瞬間がある。
それにしても手の馴染みのいいベースだ。
数ある俺のコレクションの中でも別格の1本と言えるだろう。

79年製のこのベースが縁になって製作者の林信秋氏とも親交を持つようになり、次に紹介するConcord Bass Customが生まれることになった。






俺はどうしても2ピックアップのモデルが欲しくなっていた。しかもそれはAtlanciaでなければならなかったのだ。それほど当時の俺はAtlanciaにはまっていた。
AlembicやB.C.RichなどのアクティヴものやFenderのオールドにも浮気はしたものの結局Atlanciaから離れる事は出来なかったのである。
結局、林信秋氏に直接お願いして当時既に製品化されていたConcordを基に、開発中だった(実はこれは本来ギター用に開発されたものだったが)小型のピックアップを使用する事で、2ピックアップのモデルを作ってもらう事になった。

待ち望んでいたニューモデルは84年の夏に遂に完成する。2ピックアップならではの高密度な少しコンプがかかったようなスラップの音に俺はますます有頂天になるのだった。
4個の小型ピックアップが2列ずつ、合計16個とり付けられている様はさすがに圧巻である。Garlandのようにピックアップ自体は回転しないが、それぞれのピックアップはシングルにもハムバッキングにもできるようになっている。

Atlanciaのベースは総じてどのモデルも重たいのだが、このConcordにはひとつの工夫がなされていた。
ロータス・ルートと名づけられた特殊加工のボディーはその名の通り蓮根状に何本もの筒状の穴がボディーを貫いているのだった。これにより軽量化とセミアコースティック的な独自の鳴りを生み出すわけだ。
実際にどのような効果があるのか同じモデルのソリッド・バージョンがないので正確に比較は出来ないが、俺の好みの音に仕上がった事に違いはなかった。ただしやはり重たかった。
俺はこれぐらいの重さはなんでもなかったが、ストラップはさすがに苦しそうで、頻繁に交換しなければならなかった。

当時よくナルチョとツインベースでライヴなどしていたが、彼は決して俺のベースを弾こうとはしなかった。
彼の好みには俺のAtlanciaはあまりにも重く、また俺のセッティングはあまりにも弦高が高すぎたようだった。

NANIWA時代はパッシヴだったが、解散後、新開発のアクティヴ・サーキットが埋めこめられ、現在に至っている。
アクティヴのConcordの音はMedicine Bagのアルバムで聴く事が出来る。







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