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Soul Food
アメリカでの滞在時の大きな楽しみのひとつにSoul Foodを腹一杯ぶち込むってのがある。
Soul Foodと言ってもまだ日本では馴染みが薄いかも知れないが、これがオソロシイばかりに日本人の舌に合うのである。

もともと白人の食い残しを材料にして考案されたものが多いので、大阪で言うホルモン(捨てるもの)的発想の料理も多く、Chitterlingsなどはテッチャンそのもので、我々在日関西人としては、ますます親近感が増すのである。(ちなみに米語ではドサ回りの事をChitterlin' Circuitと言う)中でも私のお気に入りはColored Greensと言う菜っ葉の炊いたものだ。たいていの黒人街のレストランではサイドディッシュとしてチョイスできる。これが見事に深〜い味わいなのだ。動物系の出汁に少し甘味を加えた味付けは、菜っ葉の苦味と絶妙のハーモニーを醸し出す。
一般的な北米の味とされる脂肪分+塩味と言った単純な味付けとは一線を隔する複雑さが実に心地よいのだ。
ハーレムに住む大阪人歌手、Masayo Queenが彼女の友人に醤油とみりんで味付けしたGreensを食べさせたところ、彼らは母を想い出して涙したと言うから日本人との味覚の共通点も理解していただけるだろう。

メインディッシュにも美味いものは一杯ある。特に煮込みものは絶品である。
Smothered Chickenなどはチキンのウマミを見事に封じ込めたたまらない一品だ。コーンブレッドと一緒に食べるとそれだけで幸せになってしまう。Pork Chopsなどもソースが絶妙で、これがまた意外にも硬めに炊かれた白飯にピッタリくるのだ。Fried Chickenもカリカリに揚げてあって非常にクリスピーだ。カリッとした歯触りを楽しんだ直後にあふれ出るようにジューシーなチキンに満たされる醍醐味は、まさに格別としか言いようがない。
黒人街ではファースト・フードでもKFCじゃなくて、Roscoe'sやPopeyeなどこのクリスピー・スタイルが定番だ。

そんなSoul Foodを手軽に食べられる店として、ハーレムのSilvia'sをお勧めする。
ここはあのApollo Theaterから125丁目を1ブロックばかり東に歩いたLenox沿いにある。ハーレムと言ってもこのエリアはApolloがNYのランドマークの指定を受けてから治安は格段によくなり、最近ではStarbacks Coffeeも出来たぐらいなのだ。(もっとも中でコーヒー飲んでるのは観光客だけだけど)Silvia'sも観光客が団体で訪れるようになって、ビルも改装して昔の風情が薄れてしまったのは残念ではあるが、やっぱりウマイ。
1990年にApolloのアマチュアナイトでグランプリを獲って、拾い集めた$180のチップで打ち上げをした想い出の場所でもあるのだ。


Oyster Bar
NYのもうひとつの楽しみはやはりシーフードだろう。なにしろ海が近いし気候も厳しいとあれば、北海道が思いっきり都会になったと想像してもらってもいいくらいなのだ。
大概の寿司ねたも安くそろうここはSushi Barのメッカでもある。Oyster Barもたくさんある。ただ気を付けなければならないのは、牡蠣は非常に滋養強壮にいいものとして知られているので、初めてのデートでいきなりOyster Barへ行こうなどと誘うと「この人何考えてるのかしら?」と勘違いされやすいらしい。ちょうど日本で言う焼肉のポジションに近いと言えるだろう。

最も有名なのはGrand Central駅の地下2Fにあるその名もOyster Bar。
ここで素晴らしいのは、まずそのメニューである。食材の仕入れ状況によって毎日手書きで書かれたメニューをコピーして客に渡すのだ。従って市価というのは存在せず、事細かに、特に牡蠣に至っては1個単位の値段が書 いてあるのだ。
しかも全米からかき集められたその種類は20種類以上に及び、名前を見ただけでは何がどれか我々素人には皆目検討がつかないのだ。値段の方は地元Long IslandのBlue Point $1.35から高級品Belonの$2.25までと日本の生牡蠣よりはかなり割安感がある。これをハーフダズン(6個)単位でオーダーするのが普通だが、出来れば4人ぐらいで4種類2ダズンは頼みたい。綺麗な銀の1本足の器に敷き詰められた氷の上に各地の名産が並べられることになる。
私はレモンを絞って殻の中に残っている海のジュースごと流し込むのが好きだが、NYの牡蠣は日本のよりもかなりコッテリしているので、器の中央に置いてあるソースにディップして食べるのもいいだろう。ケチャップベースのいわゆるカクテル・ソース、辛酸っぱいホースラディッシュ・ソース、心なしか中華風のジンジャー・ソイソースの3種類が並べてある。

この店の更に驚くべきところは200種類はあるであろう手書きのメニューの裏にビッチリとタイプアップされたワインリストである。
特に圧巻はChardonnayでカリフォルニアを中心に見事なまでにアメリカン・ワインが揃えられている。値段も手頃でグラス・ワインも数多く用意されている。アメリカン・ワインを堪能するにはもってこいの場所でもあるのだ。今回私がトライしたのはMount Eden '97だ。ナッツやバターを彷彿させるChardonnay の特徴をはっきり表すふくよかなワインだった。
広島の牡蠣には合わないかもしれないが、NYのマッタリした牡蠣にはマッチングもよかった。 もうひとつシーフードで忘れてはいけないのがワールドトレードセンターに近いピア17だ。このエリアだけはいわゆるNYの景色とは一味違ったサンフランシスコのような風情なのだ。
その名のとおり突堤に突き出した形でショッピングモールがある。この中にもいいシーフードレストランがいくつかある。
今回はHarbor Lightと言う突堤の北側の3Fにある温室のようなガラス張りのレストランに行った。イルミネーションが灯ったBrooklyn Bridgeの真正面からの眺望はこの店の料理以外の大きなアドバンテージと言える。

景色を楽しむだけでもいいか、と軽い気持ちで入ったのだが、ここの牡蠣は素晴らしかった。種類の選択はないものの、サーブされた牡蠣はアメリカのものとしては幾分小ぶりで、どちらかと言うと日本の牡蠣に近い弾力性と風味を持っていた。
加えるに、付け合せのホースラディッシュがビネガー処理してあるものではなく、生をみじん切りにしてあるものだった。これが実に具合がいいのである。ホースラディッシュ特有の鼻に抜ける辛味がレモンの酸味と共に牡蠣の風味を倍増させる。口に残った風味はChardonnayを流し込むことにより、形を変えて余韻を残す。予想外の展開に思わず顔がほころんでしまったが、やはり料金は割高と言わざるを得なかった。
Brooklyn Bridgeの夜景がタダなはずはないのである。


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