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幻のコロン
俺は結構匂い関係が好きだ。
視覚よりも臭覚の情報の方が直接的に心を動かすようである。つまりベッピンで好みじゃない匂いの女性よりはブッサイクで好みの匂いの女性の方が好きだということになる。しかしながらこの匂いというものを言葉で形容するのが非常に難しい。もちろん好き嫌いは確かにあるのだが、その境界線がどこにあるのか自分でも説明は出来ないのだ。
基本的に革の匂いやムスク系の香りは好きだったりするのだが、中にはダメなのもある。何かのブレンドの関係なのだろうが、これをアナライズする事が未だに出来ないでいるのだ。

そんな俺にもようやく気に入ったコロンと出会う事が出来たのである。7年ぐらい前の事だ。
LAで滞在していて柄にもなくビバリーヒルズをうろついていた時にたまたまサンプルをもらったこのFred Hayman273のメンズに、はまってしまったのだ。なんと形容していいのか分からないのだが、とにかく日本に普通に輸入されているものとは明らかに違う俺の心を動かす何かが感じられた。特に革のジャケットの香りとの相性がよく、実にいい気分になってしまう。

以来LAに行くたびに2本ずつ購入してしのいでいたのだが、2年前の秋に製造を中止してしまったのである。
LA中色々在庫がないか探し回ったのだが、もはや何処にも残っていなかった。これには参ってしまった。今度は代わりになるブツを捜し求めていたのだがなかなか273を超えるものは見つからなかった。色々試しては変え、試しては変えながら、合間に買いだめしていた273を細々と使っていたのだが、遂にそれも去年の終わり頃に底をついてしまったのである。

今回のNY滞在中には何とか代わりになるブツを探そうと機会があるごとに物色していたのだが、なんとペンステーションの地下のごく普通の化粧品屋に山積みされいるではないか、あの273が。
俺は一瞬眼を疑ったが、それは紛れもなく273の黄色いパッケージだった。しかもLAで$40.00していたのがここでは$32.00、しかも2本目からは半額の$16.00と言うからたまらない。思わず2本買ってしまった俺は早速パッケージを開け、久し振りにスプレーしたのだった。どうやらデッドストックで眠っていた商品が流れてきたようで黄色いパッケージのトップの部分は若干変色していた。にもかかわらず例の芳しい香りは衰えることなく俺の臭覚を絶妙に刺激するのだった。

1週間後チャイナタウンの露天商でも大量の273を発見した。
本家LAでは全く見ることが出来なかった273もどうやらワケあり品が大量に東に流れて来ているようだ。
次に273に出会う時は黄色いパッケージはもっと色褪せているのだろうか。