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![]() 2月のあたまからバーゲンフライトも見つかったので5日間ほどLONDON に行く事にした。とはいえLONDONはおろかヨーロッパの地を踏むのは全くの初めてのことなのだ。JAZZとR&Bの距離感に関して、同じ島国に住むものとしてのシンパシーを感じようとしていたのかも知れない。 ヒースローからは地下鉄ピカデリー・ラインに乗り込み宿へ向かった。ウワサに聞くとおりLONDONは曇っていた。NYに比べればかなり小ぶりの、そしてかなり綺麗な地下鉄はTUBEと呼ばれるだけあって天井は円筒状になっていた。 LONDONもNYと同じように景気はいいようだ。街角に人があふれている。手付かず状態だった倉庫街にHipなレストランやクラブがオープンし、その近辺に住んでいた連中を家賃の高騰が襲いかかると言った、10年ぐらい前にどこかの国で聞いたことがあるようなストーリーがここLONDONでも展開されているようだ。 INCOGNITOのBluey に会った。LONDONの中心部からやや東に位置した彼のスタジオを訪ねた。 倉庫を改造したスタジオだったが、リミックスに対応した実に効率のよいシステムが印象的だった。 メインコントロールは三連発並べられたO2Rで行われる。ここでのエディットデータは全て別室にあるPCに自動的にバックアップされ、そのデータは別のPCからも共有できるといった優れもののシステムだ。 偶然だが彼らが作業していたのはSoulBossaのリミックスだった。 その夜Blueyと共にRechard Bona のライヴに行くことにした。 現在ザビヌル・シンジケートで活躍中のカメルーン出身の彼は実は俺も少し気になっていたベーシストだ。彼の演奏はまず弾き語りから始まる。アコースティック・ギターを弾きながら淡々と唄う彼のバイブは非常にナチュラルでディープなものだった。ちょうど同じようなバイブをNew Orleansのピアニスト、Henry Butlerからも感じたことを想い出した。 景気のいい国の土曜ともなれば満杯の観客は雑談にも花が咲く。そんな観客に対して"Shut Up!" を連発するBlueyはこの街の人々が音楽に対する真摯な態度が足りない事をさかんに嘆いていた。 Bonaも多少苛立っているようで、ベースの音は普段よりもかなり上げられているようだった。 静かに始めたかったであろう曲も、途中で方針を変えたりしながら、それでもすさまじい集中力で非常に高いクォリティーの音楽を満喫させてもらった。 終演後遂にBlueyはステージに上がり観客に対して反省を促した。多数の観客から賛同の拍手を貰っていた。彼は真剣なのだ。 その後メンバーと談笑しているとひとりの英国紳士が訪れてBlueyに問いかけた。 「君はこのバンドのマネージャーなのかい?」 Blueyは顔色ひとつ変えずにこう答えた。 "I'm just a member of the audience." 彼は音楽がそしてLONDONが好きなのだ。 |
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![]() NYでの滞在中に是非とも会っておきたい人がいた。彼女はJuanita Fleming (ワニタ・フレミング)、ゴスペル・シンガーでブロードウェイの経験もあり、その昔ミュージカル"WIZ"の日本公演の時、魔法使い役でブルーのドレスを着て熱唱したこともあった人だ。 彼女との出会いは11年前、結成当初のHUMAN SOULの二人のボーカリスト、Jaye公山と、Silky藤野のボイストレーナーとして友人に紹介してもらったのがきっかけだった。 俺もボイストレーニングがどんなものか、皆目知識も持たず、とにかくグレードを上げたい、の一心でメンバーと共にNYへ渡ったわけだが、彼女のトレーニング法は、ベーシストである俺にも大きな影響を与えるものだった。 彼女は独自の歌唱法を確立している。 決して喉に負担をかけるものではなく、かつリラックスの上にこそ本来のエネルギーが生まれる事を、実に理論的に具現化するすべを明確に伝授してくれた。パワーというものがフィジカルなものから来るだけではない事を俺の目の前で立証してくれた数少ないひとりだ。 事実彼女の唄は非常に小さい声で唄っても、なぜかよく聞こえて来るのだ。 同じようなことをJames Gadsonのドラムにも感じた。 翌年の90年にも彼女のもとを訪れた我々は、遂に念願のアポロシアターのアマチュアナイトに出演できることとなり、それこそアポロの観客を知り尽くしている彼女の特訓により見事グランプリを勝ち得る事が出来たのだ。 本当に彼女が指摘したところで、ことごとく観客の拍手や歓声が沸きあがるのをステージから見ていると「ホンマにこれでエエンかいな。」と不思議になってくるくらいだった。 終演後、観客が一斉にステージに向かってものを投げ出すので、あれっ、やっぱり怒ってるのかな、と思ったらそれはドル札だった。みんなで拾い集めた丸められた札は$180くらいになった。 グランプリをとってステージから降りていく我々を「私の教え子たちよ。」と自慢げにハグしてくれる彼女は、初めての発表会を終えた息子を迎える母のようだった事が昨日のように想い出される。 6年ぶりの再開となったわけだが、彼女は手作りのシチューとコーンブレッドで出迎えてくれた。 彼女も自分自身のゴスペル・アルバムを2枚発表しており、最新版は昨年暮れに発売したばかりなので、その制作にまつわる話や俺の最近の活動状況などを話しているうちにあっという間に時間は流れていった。 帰る間際になって彼女はこう言った。 「アンタ、今回はベース持って来てないの?ウチの教会はベースがいないから今度の日曜に弾きに来てくれないかしら。」俺がふたつ返事でOKしたことは言うまでもない。 その日は久々の雪化粧のNYだった。 彼女の教会はイーストリバーに中州状に浮かんでいるルーズベルトアイランドにある。マンハッタンからは一度クイーンズボロブリッジでクイーンズに渡ってから、また小さい橋で戻らなければならない。 「タクシーは高くつくから地下鉄でいらっしゃい。」と彼女に言われたものの、朝9時半というのは俺にとっては早朝だ。ましては日曜ってのは土曜の次にあるから具合が悪い。 とてもじゃないけどアンプまで引きずって地下鉄の階段を上り下りする気にはならなかったのでイエローキャブをつかまえた。 ルーズベルトアイランドまでは快調だったのだが、俺がもらってた情報は"RedeemChristian Church"と言う名前とだいたいの場所だけだったから、やはり近所まで来て迷ってしまった。 この島には黒人居住者があまりいないので、歩いてるのはほとんど白人だ。案の定何人かに聞いて教えてくれる教会は綺麗な教会か、全く違う方向を示すだけだった。 よく考えてみれば当たり前の話で、早起きしてる黒人は既にRedeemに行ってるはずだから、道を歩いているはずはないわけだ。 近所の病院で警備中の警官を発見した時は、珍しく警官が救いの神に感じてしまった。 プエルトリカンの運ちゃんは「ホンマにこの島に住んでるヤツらは信じられん!」とスパニッシュ訛りでまくしたてていたがチップをはずんでやったので機嫌は治ったようだった。 教会ではすでにサービスが始まっており、控え室のようなところでJuanitaがシンガーたちを指導しているところだった。 「アンタ、肩に力が入ってるわよ。」「ハイ、息はもっとゆっくり出して!」 俺はおもわず10年前を想い出してしまった。 彼女は毎週こうして近所の若いシンガーに彼女の技を伝授しているわけだ。 もちろん彼女がリードをとる週もあるのだがこの日は残念ながら先生に徹しているようだった。 ここは小さな教会なのでクアイヤーは持たないが、4人の歌姫が集まっていた。 大きい教会ともなれば30〜40人のクアイヤーを持っているわけで、全米の数多くの教会で毎週こう言うことが繰り広げられていると考えると、この国の底辺の分厚さをまざまざと感じずにはいられなかった。 教会は学校でもあるわけなのだ。 そうこうしている内にリーダーのピアニストのアフリカ人のMakintoが現れたのでいよいよ10時から本番が始まった。 残念ながらハモンドはなかったが、ウーリッツァーのアップライトピアノを弾くMakintoの斜め後ろに陣取って、コンガとドラムと言う4人編成のバンドの演奏は始まった。 ドラマーはまだティーンエイジャーという感じだった。 歌姫たちの初々しい歌声に俺の気持ちもますます静かなものになっていった。 いつも思うが本当に教会の中のこのピースな感覚は何なのだろう。 外で何が起こっていようとこの中は常にピースが満ち溢れているのだ。 30分ばかりの彼女たちのゴスペルに続いて牧師の説教が始まった。 俺はMakintoの横に座り、彼の使いこまれた革表紙の聖書を一緒に眺めることになる。 小一時間ぐらいの説教の後、いよいよ牧師が唄い出した。 さあ、これからや、オッサンどこまで引っ張ってくれるんや、などと考えている俺はやっぱりバチアタリな人間なのだろうか。 神様、ごめんなさい。でも私は音楽が好きです。 |
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![]() NYでの滞在を終え俺はNew Orleans に足を伸ばすことにした。2/10にTriBeCaにあるWETLANDSにやってきたマルディグラ・インディアンのWild Magnoliasの面々と久々にNYで再会したことも大きな要因にはなっている。 ご存知の方も多いと思うが、このホンマもんの酋長二人を擁する必殺南部FUNK軍団を 取りまとめているのが、もはやNew Orleansで最も有名な日本人、山岸潤史である。 「お前、NYなんかオモロないやろ。早よこっちへ来い。」 のお誘いの声も、色々やりたい事が残っていたもので月末近くになってしまったのである。 3/7の火曜日はかの有名なMardi Gras がある日でそれこそ街中がパレードでうめ尽くされてしまう。 数多くのフロートから投げられたビーズで街中の街路樹がデコレートされるくらいなのだ。 俺がNew Orleansに着いた翌日からパレードはキックオフされた。 前回訪れた時はちょうどMardi Grasが終わった直後だったので本場のパレードを体験するのは今回が初めてだ。このパレードはある種リオのカーニバルにも似ていて、各地のコミュニティーごとにチームを組織してそれぞれがテーマを決めて、そのコミュニティーのKINGとQUEENをメインにグランド・マーシャルやブラスバンドを従えて、数多くのフロートがトラクターやトラックに引かれて街を練り歩くわけだ。フロートはだいたい20ぐらいあって、ブラスバンドやダンサーチームなども5つぐらいはある。 最終日のファット・チューズデイともなればゲスト・グランド・マーシャルにMAZEやWhoopi Goldbergを招待しているチームもあるほどのお祭りなのだ。 情報誌を見ればその日のパレード・コースと出発時間が書いてあるので、ポイントを見つけて貼りこむのが一般的な楽しみ方だ。 特にフロートから投げられるビーズ の数は半端じゃない。 この街で消費されるビーズの数は世界中の消費量の9割はいってるんじゃないかと思わせるぐらいのすさまじさである。投げられるのはビーズだけじゃなく、カップやサングラス、果ては人形やフリスビーなど様々だ。 この中にはメダル付きのビーズや特大ビーズなどがたまに投げられ、受け取った人に幸運をもたらすらしい。 日本で餅を投げるようなものと解釈して間違いないようだ。 どうってことない話ではあるのだが、セカンド・ラインのリズムに身を委ね、投げられたビーズを受け取るのは、やはり気分のいいものだった。 off BEATと言うNOを代表する情報誌で地元の99年度最優秀FUNK/SOUL/R&Bアルバ ムに"Moonburn"が選ばれたJon Cleary and the Absoilute Monster Gentlemenのベー シスト、Cornell Williams を訪ねた。 彼はベーシストのみならずシンガーとしても類まれな才能を持っており(またバスケットもかなりウマイ)、俺の好きなベーシストのひとりだ。たまたま彼のオフの日があったので、とことんハングアウトすることにした。 NOで彼が一番気に入っているイタリアンで彼のお気に入りのシーフードのパスタをCaliforniaのMerlotで流し込んでから、夜の街へ繰り出した。色々うろついたが最終的に彼が連れていってくれたのは、彼の実家に近いさびれたBarだった。車を停めようと路地に入ったがその先がパトカーで閉鎖されている。 どうやらその先のBarで誰か撃たれたらしい。 ルイジアナは銃規制がゆるいのでよくこう言う事が起こってしまう。幸いにして我々が目指すBarはそのすぐ手前だったので問題なく入ることが出来た。そこでCornellのオヤジを紹介された。 親子と言うよりはダチって感じがなんとも心地よかった。 このBarはそれまでうろついていた所のように若いヤツはひとりもいない。 どこか落ち着いた雰囲気を店の片隅に置かれたジュークボックスが包み込むと言っ た、典型的な場末のBarなのだが、ここがとてつもなく居心地がいいのだ。 Cornellのヤツ、若いくせにこんな場所がに憩いを求めるなんて、俺はますます彼の 事が好きになってしまった。 カウンターにはWowoと呼ばれるオバハンが座っていて、みんな彼女に$1札を渡す。 すると彼女はそれをジュークボックスにつっこんで抜群の選曲をしてくれると言った趣向だ。 また彼女の踊りがたまらない。 とても68歳とは思えない鮮やかでしなやかなステップで狭い店内を自由にかつ優雅 に動き回るのだ。 スロットマシンも1台置いてあって、近所のシェフがクォーターをぶち込み出した。 なんと彼は$10そこらの元手で1200枚のクォーターを出してしまった。 すっかりご機嫌の彼はそれからしばらく姿が見えないなと思ってたら、何か黒い塊を持って来てそれを俺にくれるのだ。黒光りする塊には金のラメでZULU 2000 と書かれていた。 「これ何やの?」って聞いてもCornellに聞けと言って教えてくれない。 Cornellに聞くと彼は飛びあがって驚いていた。 なんでもZULUは数あるパレードの中でも黒人オンリーのしかも最大級のものらしく、そのフロートから数少ないココナッツが投げられ、それはそれは非常に珍しいものらしい。 ココナッツをしっかり握り締め俺たちは家路に着くことにした。 店内のジュークは途切れることもなく、 Wowoはひとりで静かに踊っていた。 |
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