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DJと二人でライヴする。
俺にとっても初めての経験を楽園計画は与えてくれた。
以前からトライしたいとは思っていたものの、なかなか実現できずにいたのだが、関本徹生氏の作品とのコラボレーションと言う事で、俺も進んでトライする気になったというものだ。

パートナーには迷う事無くKG-Kにお願いする事にした。
大阪のアンダーグラウンドHipHopシーンの要の人間と言ってもいい彼は、実はMONTAのニューアルバムにも深く関わっていたりもするのだ。以前は世界を股に掛けてコンテスト荒らしをしていた脅威のスクラッチャーもここ6年ばかりは通天閣の下にある自らのstudio two 10で制作メインで活動していたのだ。
そんな彼が久々にステージに上がることを快く引き受けてくれるかは疑問ではあったが、俺としては是非とも彼と作っていきたかったのだ。

意外にも快く引き受けてくれたKG-Kだったが、さすがに本番が1ヵ月後に迫ってきたあたりでは動揺の色は隠せなかった。
俺としてはお互いのスキルを認め合って展開していけば必ず結果は出せると踏んでいたわけだが、KGには彼なりの確固たるイメージがあったわけで、それはラッパーのTOKIとシンガーのVIVIが加わってくれる事で、久々のスクラッチ・ショーも披露してくれる事まで承諾してくれたのだ。

初日 過去世
さすがに初日はKGも相当緊張しているようだった。
なんとサウンドチェックの時に2日ほど続いていた睡眠不足もあって、顎がつってしまったのだ。
動揺するKGは更にこむら返りまで起こしてしまって舞台で動けなくなってしまったのだ。ブレイク・ダンスでも踊りながらプレーしてるのかと思ってた俺はとんだ勘違いをしていた事になる。

この日のゲストはちんどん通信社のジャージ川口氏と小林信之介氏だ。
日本が誇るちんどんミュージックの真髄を今に伝える名人だ。更にこの日はちんどん通信社の主宰である林幸治郎氏も登場する事になった。果たして我々のビートと彼らの音楽とがどのような接点を持つのか、KGを始め疑問視する向きもあったが、いざ音を出してみると、意外にも面白い世界が展開できそうな気配を感じた。
特に獅子舞の音楽やりんご追分などの日本古来の音楽とHOUSEのマッチングは絶妙と言えるほどのハマリ具合だった。

本番ともなればフルオプションのコステュームを身にまとい、いやが上にも雰囲気は盛り上がった。
108体のアートマネキン達に囲まれて現実と非現実がHOUSE BEATに包まれて交錯するのだった。
あまりの心地よさに俺も時間を忘れて酔いしれたわけだが、特に小林氏の熱演による笛の音に思わずトランスしてしまいそうになってしまった。舞台の背後にお隠れになっていたご本尊に喜んでいただけただろうか?

中日 現世
二日目になれば我々もかなり落ち着きを増す。
KGも久々にゆっくり眠れたようでこの日は足をつる心配も無く伸び伸びとプレーしているようだった。VIVIとTOKIもステージを楽しめるようになりつつあるようだった。

現世のゲストはKAJAと彼のパートナー五十川清だ。
さすがに百戦錬磨のKAJAだ。完璧な形でしゃがれた喉に更に磨きがかかって本堂の空間を満たす。レゲエのビートはKGもお手のものでこの日ばかりは余裕があるようだった。

当初はDJとの共演に心なしか不安を持っていたKAJAであるが、リハーサルが進むに連れ、KGのクリエイティヴィティーに感銘を受けたのか、本番前にはすっかり意気投合していたのが嬉しかった。
KGのマシンやレコードから創り出されるビートに五十川くんのジャンベやスティールギターが心地よく絡み合いKAJAのボーカルを有機的に包み込んだ。

いい事尽くめの中日であったがただひとつ起きてはいけない事が起こってしまった。
打ち上げ会場の前にチェーンを掛けて駐車してあったKGのご自慢のBMXが盗難されてしまったのだ。
シャーシもさる事ながらホイールまでフルチューンされていたこのBMXは明らかに狙われていたのだった。
「最近、もう自転車も飽きてきたところやし、しゃあないかな。」
KGの言葉が心に染みた。

楽日 未来世
未来世のゲストはこの人しかないとも言える坂田明さんだ。
土岐さん主催のトリプルアルトを通じてこの1年間の巨匠のバージョンアップ度の凄まじさには毎回度肝を抜かされているわけだが、今回は去る10月にNew JerseyのBill Laswellのスタジオで録音された彼のニューアルバムに収められた作品と今回のイベント用に書き下ろされた作品を中心に演奏するのだ。

今回のイベント用に書き下ろされた作品はギターとのデュオだったので、俺は生まれて初めてベースでのアルペジオに挑戦した。
そんなに難しいものではないのだが、何分普段使わない筋肉を使ってのコントロールはさすがに苦しかった。左手のポジションはあまり変わらず内声だけ変わっていくという運指は今度は俺がつりそうになった。
次回までには完璧にしておきます、坂田さん。


さてニューアルバムの方の作品だが、俺とKGというミニマムな形でどこまで表現できるかは挑戦だった。
暗中模索の感はあったが、それでも坂田さんのボーカルが響きわたると自然に不安は消えていった。彼は今回のアルバムでは日本古来の民謡や60年代の歌謡曲などを題材にしている。これは何も奇をてらったわけではなく日本人として世界に向けて発信する姿勢を貫いている坂田さんとしては至極当然な事なのである。

本来ならば誰かリードシンガーをオファーしたかったところだったが、こう言った楽曲をHipなリズムセクションで唄えるシンガーはやはり坂田さん本人しかいなかったのだ。
そう言った彼の挑戦をBillを始めアメリカのミュージシャン達は敬意を持って受け入れてくれ、本当に素晴らしいトラックが出来上がっている。日本人でありながらむしろ保守的なアプローチしか出来ない自分に一抹の歯がゆさを感じずにはいれなかったが、現実として洋楽ばかり聴いて育ってきた環境が自分にあった事は避けられない事実である。
これからはより広いチャンネルで音楽に向かっていきたいと痛感した次第だ。

KGのひたすらポジティヴな姿勢に坂田さんもすっかり彼の事を気に入ってくれたようだった。
終演後も坂田さん自身の現在の姿勢をKGを前に熱弁されていた。テーマである未来世がまさに現実のものになりつつある事を実感できた貴重な時間だった。

最後に関本徹生さんを始め今回のイベントに関わった全てのスタッフの方々に改めて感謝の気持ちを表したい。
それからステージ写真を提供していただいた大森あき子さん、ありがとう、そしてお疲れさんでした!

楽園計画 official web:
http://serima.net/rakuen/











今までのKANKAWAのツアーとは一味違った、いわばFUSION界のオールスターバンド的な様相を呈する今回のツアーだ。
彼がNYでオマー・ハキム、ダリル・ジョーンズなどファースト・コールの連中と作ったアルバム発売記念ライヴという事でこのような人選になったのだが、KANKAWA本人も初共演のミュージシャンも多かったので、どのような展開になるのか俺も楽しみではあった。
ダイアリー風にツアーを振り返ってみたい。

リハーサル編 忘却の男 KANKAWA
渋谷のエレクトーン・シティーでリハーサルは始まった。
エレクトーンである。
あのMr.BVと呼ばれていた男が白いエレクトーンを弾くというのだ。
この異様な光景に当惑したのは俺だけではないだろう。
何でもBVを超える21世紀のオルガンを共同開発すべくYAMAHAと新たに契約したと言うのだ。
眼をギラつかせながら熱く語るKに、これはただならぬ決意があるであろう事は容易に察する事が出来た。

とは言え普段エレクトーンは彼のようなタイプのプレーヤーにはあまり弾かれる事はない。縦方向と横方向の2種類用意されたアフタータッチも彼のワイルドなスタイルでは必要ないどころか、邪魔になってしまう。
なにしろ、ハーレムのクラブに置いてあるBVと10年間戯れてきた男だ。
日本的なホスピタリティーにも似た繊細なコントローラーの数々はアジャストされる必要があった。
それにしても浜松からの二人を含めて数人の技術者が付きっきりでセッティングしている様を眺めるに今回のプロジェクトに対してYAMAHAも相当力を入れていることは事実だった。

則竹とカツオ(勝田一樹)はKとは今回初対面である。
セッティングの時点から吼えまくっているKを遠巻きに眺めつつ、多少の戸惑いは隠せないようではあった。 だが心配はいらない。このオッサンとツアーすれば、それこそ抱腹絶倒のストーリーは毎秒起こるのである。 楽しみにしておいて欲しい。

SmoothJazzという今回のアルバムのコンセプトであるが、頭の中身は既に次のプロジェクトであるOrganJamで一杯のKにとってはそんな事どうでもいいようになってしまっている。
これは俺にも都合のいい事で、俺もいまさらアルバムの臭いを再現させる事など、さらさらなかったわけでリハーサルの間にこのバンドをJamBand化させていこうとハナから考えていたのだ。素材としてはニューアルバムからの曲を使いはするが、曲によってはアプローチを全く変えて臨んだりもした。
Kも録音が少し前だった事もあり、記憶は既におぼろげになっているのがいい方向に向かっているようだった。

とにかくこの男の忘却のスピードは半端じゃない。
特に人の顔を覚えない事に関しては天下一品である。俺もどちらかと言えば苦手な方なんだが、彼は自分の楽器のセッティングをしてくれている技術者の顔さえ日にちがあくと忘却してしまう。
それだけ瞬間にかけて生きているのも知れない。

リハーサルは順調に進んだ。Kもかなりヒートアップし、Tシャツまで脱ぎ捨てて上半身裸で熱演していた。
メンバーも徐々に今回の状況を理解し始めてきたようで二日間のリハーサルでツアーに向けての準備は完了した。

リハーサルを終え、トレーナーを袖を通したKがマネージャーの軍曹を大声で呼びつけた。
「おーい、軍曹、俺は今日何の服を着てきたのかね?」
一瞬この質問の意味が一同分からなかったようである。外は小雪混ざりのみぞれ雨状態だ。
まさかそんな軽装で自宅から来たはずはないのであろうが、結局コートは誰も発見できなかった。
多分何処かで脱ぎ捨てられ無残にも置き去りにされているのだろう。
震えるKに寄り添うようにして俺たちは焼肉屋へ向かったのだった。


郡山編 則竹裕之、仁王立ち
目の覚めるような好天である。
記録的だったという大雪も今は路肩に残るだけとなった郡山に我々は降り立った。
ホテルも会場も駅から近いと言うので主催者のスタッフと歩く事にした。が、1分もしないうちにKが苛立ち始めてきているのは感じられた。とにかく彼は歩かされる事が大嫌いなのだ。

宿泊する予定のビジネスホテルが見えてきた瞬間彼はスタッフに質問した。
「あのホテルにコーヒーハウスはあるのかね?」
ホテル内にはない事が伝えられると、
「ワシはコーヒーハウスの無いホテルには泊まらん!」
と、叫ぶとたまたまその前にあったホテルのフロントにつかつかと入り込むと何事も無かったようにチェックインし始めたのだ。これにはさすがにメンバーも眼が点になっていたようだが、心配はいらない。
ツアーはこの先長いのである。
メンバーをさとしながら我々もチェックインする事にした。

会場はホテルから1分ぐらいの所にある。大通りを越える歩道橋を渡ればすぐの場所だ。
簡単にサウンドチェックを済ませてホテルに待機した。
ロビーに集合していよいよ本番だ。
Kは呼びに来たマネージャーをつかまえて、
「ワシは演奏前には階段は上らん!タクシーを用意しろっ!」
こう言い残して座り込んでしまった。さすが外タレは言う事が違うなあ、と思いつつもメンバー全員のタクシーを呼ぶあたりは筋者たる尊厳を感じた。

初日とは言え、郡山の熱い観客のリアクションで俺たちはすっかり気分がよくなっていた。
リハーサルで決めていた事とはまた違った展開がしばしば起こるのは仕方が無いとしても、演奏は膨らみに膨らんだ。
クライマックスとも言える、Kのオルガン足弾きで会場もピークを迎えた時のことだ。
Kはさかんに則竹にもっと来いとばかりに手で彼をあおった。則竹もそれに応えて更にボルテージを上げていった。それでもKはあおる手を止めようとはしなかった。
俺はとっさに嫌な予感が走った。
「ヤバイッ!」
と思った瞬間、則竹はドラムを叩くのを止めて立ち上がってしまった。
ここでボルテージが落ちたら洒落にならない。俺は目一杯のエネルギーを振り絞ってドラムの抜けた部分をベースを叩いて上げて行った。
則竹は何を思ったか、仁王立ちのままである。
「勘弁してくれよ、さすがの俺でもこの奏法やったら、そんなにもたへんデ。」
俺は心の中でそう叫びながらひたすら弾き続けるしかなかった。
後で聞くと彼はどうやって前へ出て行ったらいいのかと真剣に考えていたらしい。Kが本当にこっちへ来いと言ってると思っていたのだ。俺も長い間ステージを経験しているがこんなとんでもない勘違いは始めての経験だった。
則竹がどのタイミングでプレーに戻ったのかはあまりに必死だったので残念ながら記憶には無い。


大阪編 灯台下暗し
地元大阪の会場はPataPataDeLaSalsaである。
帝国ホテルの地下にあるので今宵ばかりはホテルに関するトラブルはないであろうと高をくくっていたが、何のミスか予約が取れていなかったのだ。しかも当日は3連休の中日と言う最悪のシチュエイションである。
なんとかK1名分だけは確保できたのだが、メンバー、スタッフ分は急遽近場のホテルを抑えなければならなくなってしまったのである。

なんとか宿の確保を終え、気を取り直してサウンドチェックに入った。
二日目ともなればカナリ余裕が出てくる。
初日の反省を活かして、構成は更にシンプルにする事にした。なにしろ初日は3時間を越えるショーになってしまっていたのだ。
郡山の熱い観客がいてればこそなりたったわけだが、無駄を省いてこそ磨きもかかると言うものだ。

チェックを終え楽屋に戻ったわけだが、Kは部屋には戻ろうとはしない。彼は実は寂しがり屋なのだ。
メンバーが他のホテルである事を終始申し訳ないと繰り返しながら、彼は結局、優雅な部屋に戻る事無くパイプイスに腰掛けてバカ話をしながら開演を待った。

どう言うわけか大阪だけは入りがよくなかったが、それぞれのメンバーのサイトの常連さんが多く集まり、オフ会よろしく和やかな雰囲気で演奏は進んだ。


広島編 店長のお勧め
広島と言えばお好み焼きである。
会場に着くや否や出前を注文し、サウンドチェック前に腹ごしらえをする事にした。新幹線で既に食事を済ませた者もいたが不思議にお好みは別腹に入ってしまう。

ここBadLandsはKとは何回か来ている。
オーナー松浦氏が手塩に掛けて育ててきたレディーズバンド"仏陀"もデビューアルバム発売目前という状態にまで漕ぎ着けたと言う。なにしろ彼は自分のレーベルのためにスタジオも作り、バンドの移動用にミニバンまで購入してしまっているのだ。

オーナーを始めスタッフの愛に育まれてすくすくと育っている仏陀3人娘だが、今の環境に甘える事無く頑張ってもらいたいものだ。
俺も今までいくつかの若いバンドを育ててきたが、彼らのケアは以外に難しい。サポートは必要だがそればかりになってしまうとかえってバンドのエネルギーを阻害してしまう事も往々にしてあるのだ。
やはりバンドは追い詰められた時こそ本領を発揮する。
かと言って追い込みすぎれば潰れてしまう。
松浦氏のサジ加減に期待したい。

広いとは言えないBadLandsのステージだがなんとか縮小版のセッティングで収まり、演奏も安定感を増しつつあった。
以前特注のB-Vがトラブッてステージ上でテクニシャンの名前をKが叫んだ事もあった想い出の会場であったが、今回は大きなトラブルも無く、白いエレクトーンも徐々にKに慣れ親しんで来つつあるように思えた。
終演後は牡蠣の鉄板焼きなどを焼酎で流し込んだわけだが、どうやらKは蓄積された疲労のためかお腹が下り始めたらしい。
なにやら嫌な予感が脳裏をかすめた。


岡山編 恐怖のにんにくラーメン
広島〜岡山の移動はいたって楽チンだ。
会場も駅に隣接したホテルの最上階のラウンジだ。余裕を持ってチェックインしてしばらく部屋でのんびりする時間があった。
どうやらPAチェックが始まったらしい。則竹は早々とサウンドチェックを始めている。
部屋にいてその状況がよく分かると言う事は、本番が始まってしまうと・・・
俺は今宵の宿泊者が少し気の毒になった。

ここ岡山のHotelGranviaは定期的にJazzのコンサートをしているそうである。
その一環として我々も呼ばれたわけだが、通常のJazzとは全く違う展開と音量を持つこのバンドの事を果たして主催者は理解しているのだろうか?一抹の不安を抱えながら、とりあえずリハーサルは本番では、やりもしないスタンダードナンバーを何曲か演奏した。
入替制と言う事もあってショーの構成は少し変更した。
出だしの2曲ぐらいは、おっ、SmoothJazzって感じでスタートしたものの、終わって見れば普段のゲロゲロ状態に突入してしまっていた。ところが観客の反応は以外にもストレートで、すっかり気をよくしたメンバーはためらう事無く2回目のステージに突入したのだった。
もはやスタンダードをやっていたバンドは見る影も無くなっていた。

演奏では盛り上がったものの岡山の夜は寂しい。
結局ラーメンでも喰いに行こうと言う事になって近所にある評判の店を紹介してもらって歩いていく事になった。 Kはまたコートを着るのを忘れているのか妙に軽装だったのが気になったがとにかくラーメン屋を目指した。
岡山のラーメンは豚骨ベースの醤油味なので俺は基本的に好きである。少し疲れが溜まっていたのでにんにくラーメンを注文した。Kも同じ物を注文した。

麺がゆであがった頃に業務用のオロシにんにくが眼に入った。
実は俺はこれが苦手である。にんにくはやっぱり生をチョップしてくれないと醍醐味が無いのである。
ストップを掛けようかと思った瞬間恐ろしい事が起こった。なんと出来上がったラーメンの上にレンゲで山盛りにすくった業務用オロシにんにくを乗せてしまったのだ。
アイタタタタ、これじゃあスープや麺の風味が台無しである。

出来上がったラーメンを見てKがつぶやいた。
「オシャレなラーメンやね。マッシュポテトが乗ってるやん。」
確かにそう見えてもしょうがない景色がそこにあった。
一口食べるとKは、
「スマン、ワシが悪かった。関西人の負けやぁ〜〜!」
そう言い残して山盛りのオロシにんにくをレンゲですくってそのまま店員に返すのだった。
空心町のにんにくラーメンが少し恋しくなった。


神戸編 グルメな1日
岡山〜神戸も移動は楽だ。
早めに入ってチャイニーズでランチする事にした。
俺の行きつけのトアーウェストにある新愛園にご招待することにした。いずれMyFavoriteThingsでも紹介しようと思っているが、とにかくここの骨付き酢豚は絶品なのである。
具は一切無し、下味された骨付きのリブの唐揚に完璧な甘酢が絡められているだけという至ってシンプルなディッシュなのだが、味と風味が絶妙なのだ。他にはミル貝、蟹と春雨の土鍋煮込み、牡蠣のてんぷらなどをオーダーしたが、さすがにメンバー一同顎を落としているようだった。

特にカツオの食欲には俺も恐れ入った。
彼は若いのに食材や味付けの知識も豊富で話していて面白い。そればかりかさすがに量も半端じゃない。
年寄り組がそろそろ満杯になってきてからさらに3品注文できる胃袋は少し羨ましくもあった。チャイニーズ喰いに行く時は絶対に必要なメンバーである。

この日のライヴはインターネットでストリームされる。
1カメだがちゃんとカメラマンが付くと言うので誰が来るのかオーナーの児島進に尋ねると彼はニッコリ笑って一言言った。
「俺や!」
Chicken Georgeらしいと言えばそれまでだが、俺はなぜか少し嬉しくなっていた。
満腹でご機嫌さんでサウンドチェックを終えるとKもさすがにご満悦の様子だった。
「エエ1日やったね。」
本番はこれからである。

本番直前にサーバーにつながらなかったりとか、綱渡り的要素はあったものの大きな事故も無くストリーム・ライヴは終了した。
終演後、俺の友人の肉屋のオヤジがテンダロインとサーロインを8kg差し入れしてくれたので打ち上げはステーキ・パーティーに突入した。
塩と胡椒だけで味付けられたステーキをヴーヴ・クリコで流し込むと舌と内蔵の細胞がもろてを上げて喜んでいるのがよく分かる。こう言った生活を毎日おくりたいものである。
カツオはここでも1等賞だ。
実に4枚のステーキを軽やかに平らげ余裕の表情で次なるイタリアンへ向かったのだ。

神戸サウナの西を南に下ったこのイタリアンのバジルソースがまたたまらない。
まずは生牡蠣にこのバジルソースをかけてシャルドネで流し込む。プレイン・ピッツァはトリプル・チーズでバジルをあしらってカリカリに焼いてもらう。締めは当然ジェノベーゼ。ただしクリームは使わない。
トリプル・バジルと松の身とエクストラ・バージンのみのシンプルなヤツだ。
もう勢いは止まらない。カメラマンとしてインターネット・デビューした児島進の舌の滑りも絶好調だ。
結局店のシャルドネを全て飲み干して豪華絢爛なる宴は幕を閉じた。

実は途中で震えが止まらなくなったKは則竹に付き添われて倒れるようにホテルへ帰っていた。
嫌な予感が現実のものになろうとしていたのだった。


名古屋編 危うし、Mr.K
どうやらKの風邪は本物になってしまったらしい。内臓系に来ると言われている今年の流行のタイプだ。
想えば渋谷でのコート忘却の日から始まり、疲労を重ねている割りには身体を冷やしていたKのコンディションが崩れてしまうであろう事は薄々には気が付いてはいたのだが、今回は少し状況がシリアスになっているようだった。
名古屋の宿は会場と少し離れているので、とりあえずKには部屋で本番直前まで休んでもらって、俺たちだけでサウンドチェックすることにした。

名古屋に着いてKを則竹に任せて、是ちゃんとカツオとで味噌煮込みうどんを喰うことにした。
老舗の山本屋へ行ったのだがここのうどんは打ち粉に蕎麦粉を使っている。
蕎麦アレルギーのカツオは少し躊躇したみたいだったが、以前1度食べているので大丈夫であろうと言う事で、蕎麦粉をよく振るい落としてもらってから調理してもらう事にした。発作が起こった所でカルシウムの点滴をすれば本番には間に合うと言う事なので気を大きくして食べ始めた。
久しぶりの味噌煮込みうどんはやはり濃かった。
毎日食べる物ではないだろうが、やはりこの土地に来ると1度は食べてみたくなるのが不思議だ。

会場に着くと地元バンドのBANANA FISHの連中が入り待ちをしてくれていた。
本当に律儀な連中で俺が名古屋に来る時はいつも色々手伝ってくれている。
ツアーも盛況の内に終り夏には次のアルバムに向けて合宿をするそうだ。

Kのパートはローディーがプレーしてサウンドチェックも無事終了した。
いざ、Kをピックアップして本番である。さすがに出だしこそ辛そうではあったが、後半はいつものKに戻っているようではあった。
ところが、アンコールでショルダーシンセで大見得を切ったまではよかったのだが、セットアップされた音源は素のオルガン・サウンドだった。
ショルダーシンセで素の音をプレーするのはやはりどう見てもいただけないものである。パーティーでコートをクロークに預けたら下にパジャマを着ていたようなものだから、おさまりがつかない。
すごすごとショルダーシンセを置いて通常の位置に戻るKの姿は同情を呼ぶものがあった。

さすがに打ち上げは控えて翌日の東京公演に備えると言うので、親方を残して我々はドラゴンズ御用達の台湾料理屋ピカイチへ消えた。
ここは全員のお気に入りだ。それぞれが自分のFavoriteDishを注文する。
ちなみに俺の一番のお気に入りは大根と豚肉の煮込みなのだが、うどん状に細長く切られた大根がトロトロに煮込まれて豚肉のエキスをタップリ吸い込んで得も言えぬ芳醇な甘味を醸し出している。唐辛子ベースのホットソースとタラタラッと掛けていただく味のハーモニーがたまらない。
カツオと招興酒を軽やかに1本空けてから、是ちゃんお勧めの蛇酒で締めた。
いよいよ最終公演、東京2Daysだ。


東京編 Sweet Home お台場
名古屋での休養が効いたのかKはカナリ元気を取り戻しているようだった。
いよいよ最終はホームグラウンドで、しかも現在彼自身がプロデュースしているお台場のT.L.G.だ。
会場に着いたKはさすがに我が家に帰ってきたような表情で入り口横の奥にあるカウチに腰をおろした。ここが彼のお気に入りである。殺風景な楽屋よりこのカウチで時間を潰すのが好きだと言う。
俺もカウチに座ってレッドアイを流し込んで眼を覚ますことにした。

今回のツアーで最も広い舞台を持つT.L.G.だっただけにスタッフもここぞとばかり余裕のセッティングをしていた。ところが1曲チェックした後、Kはいきなり叫んだ。
「アカン!話が遠いっ!昨日と同じセッティングにせぇ!」
結局全員舞台の中央に寄り添うようなセッティングに戻された。
彼は寂しがり屋なのだ、と言うのは冗談としても喋繰り合いが真情のJamBandとしては絶対的な距離感と言うのは結構大事だったりするのだ。

友人達もたくさん顔を出してくれて和やかな雰囲気の中初日の公演は行われた。
Kの友人で漫画家のBigJoeさんはステージの様子を新聞紙にスケッチしてくれていたのだが、力強いタッチがEarnie Burnsを彷彿させ、とても音楽的な仕上がりになっていた。
彼は着色してからプレセントするよ、なんて言ってくれたけれど、非常に楽しみだ。

さすがにまだ病み上がりなので初日はおとなしくしてしておくと言うので、俺はカツオと六本木に繰り出した。
俺はまだ旅モードだったが、地元六本木のカツオは既に帰宅モードに入ってしまったようだった。

二日目はMMWが来日してるって事なので、LiquidRoomにJohn Medeskiを訪ねた。
往年のVintageKeysが目白押しのステージは微笑ましかった。エコーもRolandのSpaceEchoだったりするのだ。
Solinaは久しぶりに見たなぁ。
もはや押しも押されもしないビッグスターになってしまったMedeskiは全然スノビッシュなところも無く、気分のいいヤツだった。彼もピアニカを吹くらしく、ピアニカ話で二人のオルガン・プレーヤーは盛り上がっていた。

楽日の演奏はMedeskiがいい刺激になったのか、体調が万全になったのか、Kはいつもよりフレッシュに演奏しているように感じた。ツアーの前半は若干の戸惑いが感じられた是ちゃんももはやパワー全開である。
"鉄砲玉"カツオも食欲に裏付けられたエンドレスなパワー・プレーを惜しみなく披露する。則竹ももはや立ち上がる事無く、彼が本来持っているエモーショナルなプレーでバンドをプッシュしてくれる。
あたかもこの日で終わる事を認めたくないような勢いで楽日の演奏は終了した。

差し入れにもらった大量のオレンジを全部絞ってもらってMimosaで乾杯して、この日のために作られたバーボン・ベースのオリジナル・カクテル、DriveとJazzを酌み交わした。そのままタイメシ屋に流れて旅の余韻を分かち合った。
新たな信頼関係を噛み締めながら再演を誓ったのだった。




























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