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この日の東京お台場のZeppTokyoは明らかに普段とは違ったVibeに満ち溢れていた。Music Crossroadと銘打たれたこのイベントは実は東京版春一番とも言うべきイベントだった。アチャコ一座を始め、有山じゅんじ、木村充輝、高田渡など、春一縁のミュージシャンが一同に会するワクワクするようなイベントだったのだ。

俺は前日淡路島だったので、徳島から空路羽田経由でお台場に入った。ここで坂田明さん、KG-K、DJ $HINと合流したわけだ。

このユニット今回で4回目になるが、KGは毎回機材をバージョン・アップさせている。前回の青山のFaiの時はREASONなるソフトで無数のリサイクル・ファイルをコントロールして、それこそ
複雑で芳しきGrooveで包み込んでくれたわけだが、今回はPioneerの新製品のCDスクラッチャーを持ち込んだ。
このプレイヤーがまた優れモノで、ほとんどLPや12インチと同じ感覚でCDをコントロール出来るのだ。
Loopなんかもその場で即アサイン出来るし、スクラッチ・ポイントの書き込みも非常に正確だ。
なにしろCD-Rも読み込めるわけだから、今までみたいに入手困難なLPや12インチを躍起になって探さなくてもいい事はDJ達にとってこの上なきアドバンテイジとなるだろう。
そればかりかオリジナル音源も簡単に呼び出せるわけだから、仕込みが万全になれば、彼はもはやG-3を持ち歩かなくてもいい事になる。
ニュー・マシンのパフォーマンスの高さに
ご満悦のKGであったが、このマシンにもひとつだけ欠点があった。
「これスクラッチしてても、カッコ悪いんですわぁ!」
KGは笑いながら、それでも新たな可能性を信じるようにセッティングしていた。

俺たちの演奏の直前はリクオ率いるthe HERZの演奏だった。多分にJAM的要素を含む洒落たサウンドだ。
ドラムは巨匠のご子息である坂田学が務める。
主催者の洒落た配慮で親子共演が実現した。
坂田さんだけが残り、それに俺たち3人が加わって、BON-NO inda HOUSEの再演は始まった。
さすがに4回目ともなれば息の合い方もDeepになってくる。
以前にも増して喋くりあいがスムースになってきているようだ。

このユニットでのエネルギー感はやはり一種独特のものを持つ。
やはりドラマーがいない為かボルテイジの上がり方が緩やかながら、留まる所を知らない。
短距離走の感じでスタートして、そのまま長距離に突入するとでも言おうか、それまでの俺たちの経験では非現実的だった環境がそこにあるのだ。
この非現実感の空間に於いて最も水を得た魚になるのが巨匠、坂田明である事は疑う余地はない。
毎回期待を大きく超える空間に俺たちを導いてくれる。
演奏が終わって坂田さんはポツリとこう言った。
「なんかこの形で1枚作ろうや。」
俺も同感だ。

濃ゆい人たちによる、濃ゆいイベントは無事終演した。そのまま、会場の2階にあるビア・レストランで打ち上げとなった。そのエリアはもはやそこがお台場である事を忘れさせるぐらいの関西度でむせ返っていた。
既にその過半数のミュージシャンは居を東京に移しているとは言えこの独自なVibeが失われないのはそれだけみんなが
関西を愛していると言う事なのだろうか?

打ち上げも終り引き上げる事にしたが、さすがにタクシーを呼ぶような無粋なヤツは一人もいない。なんと主要メンバーで
"新交通ゆりかもめ"に乗って新橋を目指した。このような軍団がいきなり"ゆりかもめ"の一両を占領するような形で乗り込んでいく様を想像して欲しい。申し訳無かったが、それまで幸せそうに座っていたカップルらは座席を移動せざるを得ない状況に押しやられてしまった。

"ゆりかもめ"の中でも全員の
パワーは落ちる事は無い。それにしても俺もそうなのだが何故関西人は大きな声で話をするのだろうか?地下鉄などに乗っていて、眼をつぶってみるとよく分かると思う。東京と大阪では基本ノイズレベルが明らかに違うのだ。楽屋〜打ち上げ〜ゆりかもめと何ら変わる事の無いVibeのまま新橋に到着した。
関西人は今後も誤解され続けるのであろう。













俺も大概日本中どこへも行ったが、ここ対馬は初めての経験だった。
ましては今回は韓国のミュージシャンも参加するイベントだ。いやが上にも期待は高まると言うものだ。

今年で5回目を向かえる
"ちんぐ音楽祭"は小室等さんが地元のボランティアと共に立地的にも韓国の方にずっと近いこの対馬で日韓のミュージシャンが集うイベントをやりたいという事から始まったイベントだ。
"ちんぐ"と言う言葉自体
ハングル語で友達を表すものだが、この言葉は同時に対馬でも方言として使われているのだ。それほど対馬は韓国と近しい文化を持っているのだ。
事実対馬には韓国からの観光客も多い。釜山からは船で2時間、約7千円程度で来れる。

始めて降り立った対馬だが、まずその美しい海岸線に眼を奪われた。
島のほとんどがいわゆる
リアス式海岸で、凛々しく海岸に迫った絶壁が複雑な曲線を連続させている。
中でも最も美しいのは北島と南島の境界線だろう。あんなに複雑で美しい景色は今まで見た事が無かった。とは言えこの島がふたつに分かれたのは日露戦争時に軍事目的で航路のショートカットの為に人工的に運河が作られてからと聞いた時は少し驚いた。

イベントの会場は対馬では数少ない人口ビーチのすぐ横にあった。
会場に着くや否や我々が
海に飛び込んだのは言うまでも無い。
ただしパーカッションの中村岳とキーボードの棟真司はスーパーにトランクスを買いに行ってからの入水となった。

入った日はリハーサルのみで、ウェルカム・パーティーに参加した。
さすがに韓国の連中は元気がいい。彼らが持ってきてくれた真露やマッコリで対馬の海の幸を流し込んだ。今でも徴兵制のある韓国では全てのミュージシャンが兵役の経験を持つ。中には色んな国に派遣されたヤツもいて彼らが年齢以上にしっかりして見える理由がわかった気がした。

イベント当日は前日とは違っていささかややこしい雲行きではあった。
雨男と言われるMONTAの顔が少し曇ったが、俺は晴男だ。事実今シーズンは数ある野外イベント全てをクリアしている。俺は全く心配していなかった。

時折小雨がぱらつく状況なので、舞台の上にテントが設置されたのは少し残念だったが、夜もふけてくると雨の心配は無くなった。 我々が会場入りした時はパク・ヒギョンのステージだった。
小柄な彼女は日本人には無い独特の倍音を持った素晴らしい声の持ち主だった。
やはり子音の多いハングル語を喋っているからなのだろうか、母音言語の日本人とは体格は近いもののやはり違うものを持っているんだと改めて認識した。

続いて登場した
ユン・ドヒョン・バンドはとても高いポテンシャルを感じた。韓国から来ている若いファン達の熱狂的な声援も半端じゃなかった。レイジやレッチリを彷彿させるサウンドに乗せハングル語がピタッとハマッているのだ。袖で聴き入るMONTAも表情は真剣だった。
「俺らも舐めとったらアカンな。ビシッと行こうや。」

いい緊張感の中でステージは始まった。
こういうシチュエイションでのMONTAは水を得た魚のように絶唱して横綱振りを発揮していたのだった。
最後は前日のパーティーの時に唄声喫茶よろしく小室等さんの先導で練習した彼自身による"ちんぐの唄"と"アリラン"を出演者全員がステージに上がって披露した。
半ば前時代的なこの演出も、ここ対馬ではとても心地よく感じた。


ショーが終わると同時にかなりの数の花火が打ち上げられ、そのまますぐ横の公園に準備された打ち上げ会場へ向かった。恐ろしい事にこの野外打ち上げは一般観客も参加可能なのだ。"ちんぐ"たる精神はここにも貫かれているのだった。
韓国のミュージシャン達も欧米のシーンに関しての情報は我々と同じ位持っているようだった。そんな欧米のミュージシャンらに頻繁に触れる事が出来る日本の状況を彼らは羨んでいるようだったが、俺はお隣どおしでありながら日韓のミュージシャンの交流が少ない事が悔しかった。日本にも素晴らしい連中は一杯いるし、韓国にも彼らのようなエエヤツらがたくさんいるのだ。政治レベルでのくだらない問題は山積みではあるが、こういった場がきっかけになって現場レベルでもっと
有機的な交流が太くなっていく事をやっていかなければならないと痛感した。

2次会、3次会と対馬の夜は延々と続いた。ユンを気に入ったMONTAは早くもコラボレイションの話を具体化させていた。本当にこの人の行動力の速さと言ったら半端じゃない。MONTAが韓国のスーパースターになる日も近いのではないだろうか。







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