|

本当に待ちに待ったこの半年だった。遂に現役復帰をした東原力哉を祝う形でULTRATRIOのツアーは行われた。多くのファンもそうであったろうが、俺も彼のプレーに接する事を誰よりも待ち望んでいた一人だ。
初日の音が始まった時の歓びは格別のものがあった。回数を重ねるごとに深いレベルで一体化していく心地よさはプレーする人間の特権かもしれない。
ここ一番の瞬発力、反応の鋭さ、そしてピークを向かえたと思いきやその直後に更なる凄まじいエネルギーが噴出する彼のプレーはまさにONE & ONLYと言うしかないだろう。
涙と笑いのツアーを振り返ってみたい。

スナックの王道〜堅田編
前日が京都だったので俺は武っちゃんをピックアップして、リキはULTRA名物の美人マネージャー玲子ちゃんにピックアップされてハックルベリーに向かった。初めての場所で観客の入りはいささか寂しいものがあったが、それでもこの日を待ち望んでかなりの遠方から来られた方も多かった。
前回のツアーは急遽Martyにピンチヒッターをお願いしたので、リキと共にという事になれば実に1年ぶりにのツアーである。とは言え音が出た瞬間に何事も無かったように
ピタッとULTRAの世界が出来あがってしまうのが少し嬉しくもあった。
様々な想い出のフラッシュバックや、新たなハプニングが毎秒入り乱れつつもあっという間に初日のステージは終了した。オーナーのご招待で俺達は地元のスナックに向かった。お姉ちゃん達と馬鹿話をしながら水割りなどを飲むオヤジな感じもまた格別なのだ。
いつしか宴はカラオケ大会と突入した。まず武っちゃんが小林旭の"自動車ショーカ"を唄う。ステージでは少しシャイな母性本能をくすぐるタイプの彼も実はカラオケとなると一気にそのパワーを全開にする。
その後もリキが"嵐を呼ぶ男"を、俺も裕次郎の"ブランデーグラス"を、と王道中の王道を突き進む事になった。これではULTRA TRIOじゃなくて日活トリオなのだ。

もちろんアフターアワーズは〜豊川編
商店街の中にあるHouse of Crazyの壁には数多くのNew Orleans Jazz & Heritageのポスターが飾られていた。毎年色々な画家がNew Orleans縁りのミュージシャンを描くこの公式ポスターは実に美しい。セッティングするのも忘れて俺はしばし見入ってしまった。どうやらここのオーナーもそうとうな好きものらしく毎年4月にはNew Orleansに行っているそうだ。
New Orleansのミュージシャンに見つめられながらこの日の演奏も無事終了した。打ち上げはドラマーでもあるオーナーと共に近所のジャズクラブに行く事になった。演奏が終わって更に演奏に行く馬鹿さ加減が俺達のいいところだ。店内では既に地元の連中が演奏でなごんでいる。テンコ盛りにオーダーしてそれらを胃袋にぶち込むや否や俺達はステージに上がっていた。
ステージ前には一切アルコールを飲まない武っちゃんもアフターアワーズでは話が別だ。いつしか地元のミュージシャンも加わり、House of crazyのオーナーもパーカッションで参加しつつもGIGは進んだ。
フィリピンのお姉ちゃんを同伴してきた社長さん集団からおひねりをせしめた力哉はさすがだった。
ポッと出のミュージシャンではこうは行かないのだ。

ベッピンさんにはかなわない〜伊賀上野編
来年3月に行われる"ブルース伊賀の乱"の前哨戦も兼ねて行われたプラサードのライヴは毎度の事ながら熱気に満ち溢れていた。前回は創業二百有余年という田楽屋に招待されたが今回は懐石&寿司をご馳走になる事になった。とは言えこれは演奏前の話である。盛り上がりたいのは山々だが、ここで火を吹いてしまうとその後の演奏所では無くなってしまう。いささか不完全燃焼気味に、食べ残したものは折に詰めてもらって俺達は会場に向かった。
ここの狭さは妙な心地よさがある。3人くっついて演奏しているのだが狭苦しい感じがあまりしないのだ。伊賀の里だけに空間に何か仕掛けがあるのかも知れない。
文字通り大盛り上がりで演奏を終えると共にその場で打ち上げは始まった。
ここのマスターはホントに油断の隙もない人物だ。ご機嫌さんで飲んでるな、と思いきや突然へべれけになってしまう不思議なスピード感を持っておられるのだ。
宴もたけなわを向かえ、場所を変えようという事で俺達も機材を積み込む事にした。機材が積み終わる頃入り口に飾ってあるアフリカの大きな木彫りの麒麟を指差して美人マネージャーが言った。
「ねえ、マスター、あの麒麟、スッゴイ気に入ってるんですけど、いただけません?」
マスターがふたつ返事でOKしたのは言うまでも無い。
実は彼女、初めてここに来た時から狙いを定めていたらしい。ただ1回目で即お願いするのも何なんでって事で今回遂に事を起こしたと言うのだ。
何処に於いても美人は得なのだ。
この日の演奏は下記URL池ちゃんのサイトで聴く事が出来る。
http://www.kawachi.zaq.ne.jp/maido/live/011103/index.htm

ボケコール〜和歌山編
俺の故郷である和歌山で演奏するのは実に久し振りだ。1年半は経っているだろうか、待ち構えているように同級生どもが大挙現れた。予想どおりと言うかセンターの一番いいテーブルをいくつか抑えていたのは連中だった。ステージに上がるや否や罵声とも言える野次を浴びる事が出来るのも、ここ和歌山ぐらいなものだろう。
この日リハで携帯をなくしてしまった武っちゃんはアンコールの時に観客に客席のどこかに落ちていないかを尋ねた。即座に同窓生の弟が「武さん、眼の前にあるやないですか!」と上手のPAスピーカーの上に置き去りにされている携帯を指差して叫んだ。
と、同時に女子バスケットボール部(当時)の連中が「ボ〜ケ!ボ〜ケ!」とシュプレヒコールを始めたのだ。やがてその波は会場全体に広がる事となり、この日一番の盛り上がりを迎えることとなった。
それにしてもこの女どものリアクションと言ったら恐ろしいばかりのスピード感だった。
素人にしておくのはもったいないぐらいと言って過言は無いだろう。

ウエスでおます〜奈良編
久しぶりに実家で1泊して翌日は奈良へ向かった。
ここY&Yを経営しているJEWELはリキの魅力の全てが詰まっていると言ってもいいような"This is 東原力哉"なるビデオも発売しているのだ。ちなみにこれには俺も出演している。
話が盛り上がって、武っちゃんのも作ろうという事になった。
元来インストラクチュアル・ビデオが目的なので武っちゃんにはWesMontgomeryものの渋〜〜いヤツを1発かましてもらおうという事になった。
さて何かいいタイトルを考えなければならない。
京都出身のジャズギタリスト山口武を全面的に印象付けるタイトルは無いものか?
話の盛り上がって来るといいアイデアはポンポン出てくるものである。
「山口武のウエスでおます」
発売を楽しみにしてもらいたい。

温泉と蟹〜鳥取編
ここAfterHoursは他ならぬ松本正嗣(gt)菊池ひみこ(pf)夫妻が経営しているライヴハウスなのだ。実家である銭湯の真上に作られているのだ。しかもここは天然温泉なのだ。シャワールーム付きのライヴハウスはいくつかあるが、温泉付きという事になるればおそらくここをおいて他には存在しないだろう。KANKAWAが聞いたらきっと泣いて喜ぶに違いない。
演奏が終わるや否や松本さんが入浴券とタオルを持って来てくれた。こんな有り難いホスピタリティーは無い。汗を拭く間もなく俺たち3人は階下へ降りるのだった。
こじんまりした浴槽は何故か懐かしさを彷彿させるものだった。滑らかな湯質は旅の疲れを身体の芯から癒してくれるのだった。
紋々系の兄さん方も何人かおられたが、みんな何の彫り物もしていない俺の身体を、馴染みの無い顔やな、風に気にしているのが印象的だった。
これぞ銭湯の醍醐味なのだ。
階上に上がると既に打ち上げの準備が出来ていた。解禁間もない松葉が茹で上がり、横には鍋も用意されていた。まだ時期が早いので甘味が足らないと地元の人は言うが、俺たちにとってはこんなに身の詰まったふくよかな松葉はそうそう口にする事は出来ない。
ボルドーやチリの赤で包み込むようにしてたらふく至極の時を過ごしたのだった。
風邪で体調を壊していたひみこ女史も顔を出してくれた。
鳥取のゆったりした時間の中で音楽を作りつづけているのが少し羨ましかった。

蕎麦とデーママ〜出石編
続く出石は蕎麦所だ。このデーライトも有名な蕎麦屋が2階を改造して作ったライヴハウスだ。
リハが終わると、松田聖子とGLAYのファンクラブにも入っている名物ママのデーママがディナーを用意してくれていた。出石蕎麦をいただき蕎麦湯を注文すると彼女は甲高い声で叫んだのだ。
「いやぁ〜〜、蕎麦湯流してしもたわぁ〜〜!」
天真爛漫な女性なのである。
打ち上げでも彼女のパワーは落ちる事は無かった。そんな中ヒゲゴジこと金沢英明から武っちゃんに電話が入った。向うも旅の途中らしいがこちらの盛り上がりを羨んでいるようではあった。
宴も終りに差し掛かった時に武っちゃんの携帯をチェックするとヒゲゴジからのメッセージが残されていた。なんやかんや一通りの事を喋った後、一呼吸あって彼はこう言った。
「俺もエレベ持っとるよぉ。」
ヒゲゴジのULTRAは想像出来ないのだ。

至極の椎茸〜福知山編
出石から福知山への移動は楽である。俺たちは竹野町にある床瀬蕎麦で昼食をとる事にした。山あいの旧家をそのまま利用したような蕎麦屋が何軒か建ち並んでいる。広間には大木をくり抜いて作られた火鉢に炭がおこしてあって、蕎麦を待つ間焼き物を楽しむのだ。
やまめや鶏の喉骨である"まつば"(いわゆるWishboneね)などをいただいたのだが、最高だったのは椎茸だ。見事な肉厚の椎茸はひだを上にして網に乗せる。ひだに汗をかいたように水滴が出てきたらOKだ。そのままタレに付けていただく。
十分に弾力感のある歯応えがタマラナイ。火が通り過ぎていないので椎茸が本来持っている香りをより積極的に感じる事が出来る。
また付けダレが素晴らしいのである。甘味をつけた醤油がベースなのだが、噛み締めるほどにほのかに山椒の香りが余韻を残すと言った見事な演出なのだ。
わざわざ食べに来る価値のある一品と言えた。
お酒もいただき蕎麦でしめた我々は、それでもまだ時間があったので、出石城跡を見物してから福知山へと向かった。
SoundRattはそんなに広くない会場の割りには素晴らしいPAシステムを持っていた。システムがしっかりしてるとアンプメインで音を創っている時とはまた違ったアイデアが浮かんでくるから面白い。
地元のミュージシャンも多く来てくれていたみたいで、彼らとともにそのまま打ち上げに突入した。ひとりがガットギターを改造したアコースティック・ベースを持っていたのだったが、リキがこれを痛く気に入って、月亭可朝よろしく「ボインは〜〜〜♪」を延々連発するのだった。
彼も昔はニヒルな男だったのだ。

武、一気飲み〜苦楽園編
久々に地元に戻ってきてのYellowJacketsだ。ここのシステムもしっかりしていて俺はとても好きだ。なにしろ低音フェチの俺だ。数少ないサブウーファー付きのライヴハウスとしてますます頑張って欲しいのだ。
オーナーのノミオ自らサウンド・チェックに立ち合ってくれたお蔭で、かなり満足度の高い状態でステージを迎えることが出来た。
本番中に何の加減か俺はステージで武っちゃんにビールを勧める事になってしまった。ご承知のように彼は本番前には酒を飲まない。何でも以前酔って乱入してエライ迷惑をかけたらしい。実はそれは先日訪れたAfterHoursだったらしいのだが。
ビールを勧める俺を後押しするように、いつしか会場は一体となって一気コールが始まっていた。俺まで気分を乗せられてしまって一気飲みしてしまったのはお座興だったが、飲み干した後の武っちゃんも素晴らしかった。
俺はもっと崩壊した武っちゃんを見てみたいのだ。
この日のレポートもお馴染み池ちゃんのサイトで
http://www.kawachi.zaq.ne.jp/maido/live/011125/index.htm

ULTRAはエエかな〜岡山編
苦楽園での一気飲みで勢いが付いたのか、デスペラードの楽屋で武っちゃんは飲みながら談笑している俺とリキに向かって
「俺も1杯飲もかな」
と切り出したのだった。
ステージ前は飲まないはずだった事を問いただすと
「ULTRAの時はエエかな」
と答えるのだった。
この感じなのだ。
もはやULTRAの時の武っちゃんはRonさんとやる時とは別の次元に羽ばたこうとしているのだ。
俺たちと共に崩壊への旅路に出る覚悟が出来てきたのだという事を確認できて少し嬉しかった。
もちろん演奏がウマク行った事は言うまでも無い。
ULTRAのツアーもクライマックスを迎えようとしているのだった。

愛しのGRETCH、そして想い出の地へ〜米子編
想い起こせば1年前、ここ米子であの震度6強という地震に遭遇したのだった。詳しくはBackNumberを見てもらうとして、俺たちもある種の郷愁と一抹の不安を抱きながらこの地を踏んだのだった。
とは言え演奏が始まってしまうとそんなもんどっかへ飛んでしまって、もはや無敵の状況を呈するULTRAにとって何の恐怖も関係ない常態だったのだ。
打ち上げは久しぶりに地元の有名なジャズクラブである"いまづ屋"にお邪魔した。
ベーシストでもあるマスターの町研さんと同じへアースタイル(?)になってからは初めてお邪魔する事になった。
すっかり楽しませてもらって、さあ帰ろうかという事になったがリキがなかなか立ち去ろうとしない。ステージから離れようとしない彼の傍らには非常にコンディションのよい60'sのGretchのドラムセットがあったのだった。
機材車に何とか積み込もうとするリキを何とかなだめてホテルに戻ったのだった。
明けて昼食を想い出の地でとる事にした。
1年前、東原力哉いちおしの蕎麦屋"上代(かみだい)"で満席待ちをしていた時に俺たちは地震に遭遇したのだった。
1年越しにようやく口にする事が出来た上代の蕎麦は素晴らしいの一言だった。
蕎麦自体の味がしっかりしているものだから、タレもほとんど付けずに食べても美味しいのだ。
塩で食べたり大根おろしで食べたり、すっかり楽しんだわけだが、更に蕎麦がきまで注文してそれを平らげてしまった。
久しぶりに蕎麦らしい蕎麦を堪能して、大阪への帰路につくのだった。

恐怖のルミナリエ〜神戸元町編
米子が終わって約1ヶ月後に残された地元2箇所のライヴを迎えた。
まず神戸は元町のJamJam、オープニングに関学のジャズ研の連中が演奏してくれるので、俺たちはサウンドチェックを終え、長い時間をもてあます事となった。
近所のベトナム料理でゆっくり食事をしたもののまだ時間に余裕がある。せっかくだからルミナリエにご案内する事にした。
が、それは甘い考えだった。7回目を数えるルミナリエはもはや俺が知ってる以前のものとは桁違いに多くの人が集まるイベントになっているようだ。桜ノ宮の通り抜け真っ青の大群集が、兵庫県警の管轄のもと一方通行を守りながらずるずると進むのだった。
とてもじゃないけどルミナリエに行き着くどころではなかったのだ。
武っちゃんたちを案内して俺は早々に引き上げる事にした。元町方面に戻り、スタジオチキンジョージで弦を買おうと大丸前を西方面に向かおうとすると警官に呼び止められる。
理由を話して一通の逆行を許されたが、いやはや面白くない話だ。
ルミナリエはもっと普通に楽しみたい。

ロックとヤンママ〜寺田町編
さて長かったツアーの最終日は地元大阪は寺田町駅の高架下にあるFireLoopで行われた。
この日もオープニング・アクトがあるのでサウンドチェックを終えて俺は武っちゃんと近所の小料理屋で食事をした。ほろ酔い気分で店に戻ると、店に残っていたリキはオープニングをしてくれるROSEYDOLLの連中と既に宴会状態に入っていた。
いやぁ〜〜、それにしても息のいい連中だ。俺も乗り遅れるわけには行かない。
ピッチを上げて連中の演奏を楽しむ事にした。
客席にはメンバーの家族であろう幼児を連れたヤンママも何人か見受けられた。親父のロックンロールはおとなしく聞いていても、聞き慣れない俺たちの演奏にたまに泣き声が聞こえて来るのが微笑ましかった。
演奏が終わって積み込みが終わると、てぐすねを引いて待っていたROSEYDOLLの連中と共に居酒屋に流れた。演奏が終わっても連中の息のよさは変わらない。とは言え時折見せる父親の顔は印象的だった。
寺田町一安いと言う、生ジョッキ1杯\280の居酒屋で大いに飲み再会を誓い合ったのだった。
なんとこの日の演奏が23分32秒もストリームで聴けたりする。by 池ちゃん

早くアップしなければ、と思いつつ、あまりの忙しさに遂に1ヶ月遅れ(初日から考えれば2ヶ月遅れ)でようやくアップに漕ぎ着けた。
こうして見ると盛りだくさんのツアーだったが、想い出以上に確かな手応えを感じることが出来たツアーでもあった。
今後のULTRAに期待して欲しい。
|