>>> to Back Number TOP >>> to What was Happening? TOP   





リハーサル編〜脅威の新兵器
昨年9月のツアーのライヴ・アルバムという形で発売されたDRIVE BANDの記念すべきデビュー・アルバムの発売記念ツアーは則竹裕之の渡英壮行会も兼ねて行われる事となった。ツアーに先駆けて目黒の某スタジオでリハーサルが行われた。このスタジオにはB3が常設されているのだ。まさに我々にはもってこいのスタジオなのだ。

多忙なメンバーのスケジュールが合わなく、ま、俺が一番酷い状況だったのだが、リハは深夜から行われる事となった。一仕事終えて俺が目黒に着いた頃には既に待ちくたびれた御大Kと今回のツアーのもう一人の主役である則竹は既に近所の焼き鳥屋で一献交わしているのだった。レイト・フィットなリハに備えて既に飲み始めているというカツヲも時間の問題でJOINするとの事。再会の歓びを噛み締めるようにヒートアップしていくのだった。

リハの時間になったのをローディーが焼き鳥屋に伝えにきた時だ。Kが彼に是ちゃんはどうしたのかを尋ねた。セッティングをしている事を伝えるローディーにKが吼えた。
「そんな事してる場合か!すぐにこちらに呼びなさい!!」
あきれきった表情で焼き鳥屋に現れた是ちゃんと共に焼き鳥屋で俺達のリハはスタートしたのだった。

宴もたけなわという感じだったが、さすがに少しは音を出そうという事で、スタジオに入る事にした。DRIVE BANDが進化し続けている事はここでも明らかだった。実にどんどん新曲が出来ていくのだ。さすがにスコアを用意していたのは是ちゃんだけだったが、圧巻はKが最近使っているボイス・レコーダーだ。ご承知のようにKの忘却のスピードは半端じゃない。ここのところ複数のプロジェクトを並行してこなしている彼にこの忘却は禁物である。
そこで彼はこのボイス・レコーダーなる新兵器を持ち歩く事にしたのだった。思い立った時にすぐにこのレコーダーに記録する事により仕事の取りこぼしはほとんど無くなる訳だ。ところがそればかりか、曲のアイデアをも記録できるこの新兵器は今回大きな力を持つ事となった。しかし、想像して欲しい。大の大人が5人もそろって、ボイス・レコーダーに記録された、ダミ声のスキャットを基に曲を仕上げていく姿を。滑稽とも思えるシチュエイションながら、実に気分だけはよく伝わるこの方式は、かえって安物のシークエンス・データよりも数段優れているようにすら感じた。

何曲か新曲も仕上げ、早々にスタジオを切り上げ、今度は居酒屋へ流れ込みツアーに備えるのだった。



広島編〜更に新曲
初日は前回と同じ広島だった。新大阪から乗り込んだ俺は駅で買った蓬莱の豚饅を手土産に東京から乗り込んでいるメンバーと合流した。蓬莱ファンで有名なKのみならずメンバーにも大好評で10個の豚饅はあっという間に無くなった。

会場に到着して普段ならお好み焼きを注文するのだが、この日ばかりは全員満腹だったようだ。
サウンドチェックがてら、Kの奏でるスロー・ブルースに触発されて、なんともう1曲新曲が出来上がってしまった。バンドの状況は既に最高だ。これで初日なのだから先が楽しみというものだ。



神戸編〜魅惑のテキーラ
二日目は神戸だ。今回は時間に余裕があったので1年振りに究極の上海料理を新愛園に食べに行った。ミル貝や蟹と春雨の土鍋煮込みや絶妙の骨付き酢豚などの数々のスペシャリティーにメンバー一同すっかりご機嫌だ。最後の炒飯に至るまで、メンバー一のグルメで知られるカツヲも完全にノックアウトされた感じだった。

演奏の方も去年に比べてグッと密度が濃くなった感じがした。アルバムを出した事でやってる側もよりフォーカスするポイントがハッキリしてきたのではないだろうか。より積極的に演奏を楽しむ事が出来てきているのは間違いない。

終演後はこれまた昨年に続き、極上のバジル・ソースを求めてイタリアンの名店アチャホに流れた。前回は体調不良でこの素晴らしいイタリアンを満喫できなかったKも今回は絶好調である。満腹になった後も更に物足らないKと共にBARになだれ込む事となった。

場所を移してもKのエネルギーは留まる所を知らない。演奏がウマク行っている事も彼を上機嫌にしているのだろう。それにしても次から次へとショットグラスに注がれるテキーラを美味そうに流し込んでいるKに一抹の不安を感じたのは俺の取り越し苦労なのだろうか。



名古屋編〜きしめん オン オルガン
続いて名古屋だ。1時間強の移動は楽なものである。ところがKの様子がおかしい。やはり夕べのテキーラが効いているのだろうか。ツアーも3日目ともなれば体力的にも最初のピークが来る頃ではある。とは言え二日酔いというにはあまりにも悲惨なKの表情ではあった。

会場に着いてしばらく休養していたKだったが、さすがに少し空腹感を感じたのできしめんをオーダーした。そうこうしている内にサウンドチェックが始まったので、出前で持ってこられたきしめんはオルガンの上に配達される事となった。ウッディーなオルガンの上にサーブされたきしめんが妙にマッチしていたのがおかしかった。

1回目のステージは何とかこなしたものの、インターミッションで疲労がピークに来たようだった。楽屋の真中でぶっ倒れたKはつぶやくようにこう言った。
「なんか神戸の後の名古屋ってのはアカンね。」
アカンのはテキーラ飲み過ぎたアンタやがな。

2回目のステージの前半こそ危うい雰囲気を醸し出していたKだったが、後半ともなれば一気に復活し、滞りなくステージを終える事が出来たのにはさすがの俺もホッとした。その後のアフターアワーズでは二日酔いなど何処吹く風で絶好調だった事は言うまでも無い。



TOWER SHIBUYA編〜握手会?
東京での最終公演の前に渋谷のTOWER RECORDSでアルバム購入者を対象にしたミニライヴ&握手会があった。こんなおっさん相手に握手会ってのもなにかと思ったが、レコード会社のスタッフが苦労して作ってくれプロモーションの機会だ。こちらも目一杯楽しむ事にした。

通常のインストア・ライヴではアンプラグドものが主流だが、ほとんどライヴ・ハウスと言った環境が準備されたTOWER SHIBUYAでは我々はフル機材を持ち込んで30分のステージを務める事にした。如何にこのバンドがライヴを大事にしているかが分かってもらえたかと思う。演奏時間こそ短かったがその中でツアーで積み上げてきた自信の片鱗を積極的に見せる事が出来たと思う。単なるプロモーショナル・ライヴとは思えない充実感を感じる事が出来た。終演後の"握手会"でもリスナーのこのバンドに対する期待を感じる事が出来ていい気分だった。
それにしても発売記念といいながらそのほとんどを新曲で構成するあたり、このバンドの推進力はまだまだ勢いを失いそうに無いと再認識した次第だ。



東京編〜いってらっしゃい則竹裕之
いよいよ楽日が訪れた。Kは前日岡山で大事なプレゼンテイションがあったため、スーツ姿で登場だ。そして遂にこの日はDRIVE BANDにもB3が登場する事となった。想えば1年前、オルガンの新たな可能性を求めて、あえてHammondに頼る事無くスタートさせたDRIVE BANDであったが、紆余曲折の後、遂に本来の姿を何にはばかる事無くさらけ出せるようになってきたという事なのだろう。B3の前に座るKの表情には自信に裏付けられた安堵感を感じる事が出来た。

もう何も恐れる事の無くなった5人の音の塊は縦横無尽に会場の空気を埋め尽くすのだった。しばらく共演する間隔が空いてしまう則竹とのしばしの別れを惜しむように全ての音が絡み付いているようだった。

終演後、TOWERに続いて今度はサイン会が会場で開かれる事になった。ところが楽屋に戻った俺達を誰も呼びに来ないのだ。このままではお客さんが帰ってしまう。気を利かせた我々は自ら会場に出て用意されたテーブルにつく事にした。ところがインフォメイションが行き届いていないのか、一向にサイン会は始まる気配を見せない。さらし者状態が嫌いなのは誰でも同じことだ。遂にKがぶっちぎれてサインペンを投げ捨て楽屋へ引き上げていった。

このシーンを目撃した観客はKのラフな面を印象付ける事になったかも知れないが、あえて俺は彼を弁護したい。プロモーションとはレコード会社の思惑とアーティストの協力の上に成り立つものだ。このお互いの信頼関係があって初めていいプロモーションが出来るというものだ。特に演奏もある現場でのプロモーションに関してはこれがますます大事になってくる。仕切りの悪さがもたらすストレスは会社員では到底想像できるものではないのだ。
なんでも会場であるSTB139の意向で会場でのサイン会に関する影アナを終演後出す事が出来なかった事が今回の仕切りの悪さにつながったと言う事だったが、影アナがだめだったら、生声で意向を伝える事ぐらいの機転が利かないものだろうか。

いずれにしてもタイミングはいささか悪かったもののサイン会も無事終了し俺達は則竹との別れを惜しみつつ六本木に繰り出すのだった。

ロンドンの則竹からはメールが届いている。色んな刺激を楽しんでいるようだ。DRIVE BANDは年内にもう一度大きなアクションがあるだろう。今からその日の事が楽しみで仕方が無いのだ。



 





UP